ごった煮イマジネーション

140字じゃ足りないあれこれ。

エヴァンゲリオンの終わりを見届けた話

※この記事には2021年3月8日(月)公開『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の内容が含まれます。

 

1990年生まれの私が初めてエヴァと出会ったのは、奇しくも作中のパイロットたちと同じ14歳のことだった。

当時キッズステーションで放映されていたTV版、旧劇場版を観た。

父親と上手く行っていなかった自分の日常を、どこかシンジに重ねていた。

酷評する人もいるTV版のラストも自分としては腑に落ちる気がして、何度も繰り返し観ては泣いた。

旧劇場版のラストは、絶望的だったけれど、その分心の中に深く残った。

 

その後、新劇場版は、序、破、Qとも公開直後に観に行った。

序では敵ながら美しく描き直された第6の使徒の映像美に感動した。

破はTV版から大きく変わったストーリーを驚きながら受け止めた。

Qは何が起こったか全くわからず、シンジと同じような戸惑いを胸に抱えたまま鑑賞していた。

当初3作で終わるかと思った新劇場版はQでも終わらず、完結はお預けとなった。

その後、数回の延期を繰り返し、ようやく昨日、公開を迎えたのが、『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇だった。

 

正直、観るのが楽しみだとは100%言い切れなかった。

上映時間が2時間を超えると聴いて、喜びよりも、何を見せられるのだろうという思いのほうが勝った。

下記の記事を読んでいたこともあり、精神的に厳しい環境で庵野総監督がこの映画を作ったことを知っていたので、展開が重いのではないかという懸念もあった。

diamond.jp

また、タイトルに付いている𝄇という記号から、(最悪は)ありがちなループものエンドであったり、夢オチであったりという結末を迎えることも危惧していた。

それでも、公開初日に午後半休を取り、人生初のIMAXで鑑賞することを決めた。

 

結果は、この作品を作り上げてくれた庵野総監督にありがとう、お疲れ様でしたと言いたい内容だった。

Qでは登場しなかったトウジやヒカリ、ケンスケの成長した姿を見ることが出来て、14年という年月を実感した。

ミサトに何があって、Qでシンジにあんな態度を取っていたのかも明らかになって、初めてQを観たときに抱いていたもやもやも解消された。

今まで、ユイの幻影にすがりついているだけだと思っていたゲンドウのことも、シンジが対話することで少し心情を理解することが出来た。

カヲルと加地さんの関係など、今作で初めて描かれて、なおかつ観客にすべてが説明されたわけではないこともあるけれど、

序、破、Qで広げた大風呂敷は、畳めたと言っていいような仕上がりだったと思う。

上映時間は長かったけれど、演出や作画のおかげで、あっという間に感じた。

また観たいな。

イヤーエステサロンに行った話

2020年。

わたしは今月下旬に、30歳になる。

新年を迎えた際は、お盆とお正月にしか長期休暇(といっても各4日間)が取れない夫と、

長崎県五島列島に旅行に行って、教会群や美味しくて新鮮な海鮮を使った料理などを楽しんでいた。

2泊3日の旅行はとても充実していて、新しい一年もそうであることを疑うこともなかった。

 

1月末頃から、雲行きが怪しくなった。

中国で発生した新型ウイルスは、あっという間に日本中に広まった。

職場でもプライベートでも、とにかく感染しない、感染させないことを念頭において行動するようになった。

 

色々な事情で、私は前職を4月末に辞めることを決めていたので、

3月はコロナ禍での転職が成功するかどうかかなりの不安を抱えていた。

何とか面接を突破し、行きたい企業に5月1日付で採用してもらい、働いている。

 

もともと在宅勤務の仕組みを持っている会社だったので、

初出社した日にパソコンを与えられ、出社しての勤務は限られた日だけということになった。

 

在宅勤務の日は通勤にかかる往復2時間が、自由に使えることになった。

これはかなり大きく、朝ゆっくり寝られるし、

夕方には混み出す前のスーパーに買い物に行ける。

いつ自分が新型コロナウイルスに感染するかという不安(あるいは感染しているのではないかという不安)はありつつも、

出社しなくていいことは、精神的にも肉体的にも転職前よりかなり楽になった要因のひとつだ。

 

余暇の時間が増えたので、YouTubeを観る機会が増した。

その中でハマっているのが、耳かき動画だ。

ASMRモノではなく、イヤーエステサロンがアップしている、人間の耳の中を掃除する動画だ。

もともと角栓を抜いたり、ニキビや粉瘤を潰す動画が好きだったのだが、

関連動画に耳かき動画が出てきて、すっかり心を奪われてしまった。

上記に挙げたような動画は、かなり視聴者を選ぶと思う。

だが、わたしは汚れが取り払われる爽快感が好きなようで、いくらでも観ていられる。

 

30歳になるにあたって、自分へのご褒美にこれまでちまちま貯めていたお小遣いの中から何か贅沢をしようと思った。

そこで思いついたのだがイヤーエステサロンを訪ねることだった。

思い立ったが吉日、目をつけていた

ボニータニート大阪店さん

http://www.ear-esthetique.co.jp/osaka/

の予約を取りいそいそと伺った。

 

店内はリラックスできる静かな空間で、施術してくれるお姉さんも優しく、すぐに安心して身を委ねることができた。

45分間¥6,200円(税込)のベーシックコースを受けたのだが、

耳かきだけでなく、耳ツボや首筋から頭のマッサージもしてくれて至れり尽くせりだった。

初めて見た自分の耳の中は、YouTubeの動画で上がっているような汚れ具合とは程遠かった。

(施術して下さったお姉さんによると、動画になるレベルの人は逸材とのこと)

しかし、イヤーローションをたっぷりつけた綿棒でじっくりと耳かきをされる体験は非常に心地よく、

終わった後は何だか周囲の音がクリアに聴こえるようなそんな気がした。

個人的にヒットだったのは耳の中の毛をカットしてくれる時の音。

しょきん……しょきん……というハサミの音が爽快で楽しかった。

 

また3ヶ月くらい後に行ってみようと思う。

なお、お友達を紹介するとお互いお得になるクーポンがあるようなので、

興味を持たれた方はまたわたしにお声がけいただければと思う。

コーンポタージュソムリエ2019-2020シーズン

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コーンのシャキシャキ感がある。塩味は控えめで喉が乾かない。程よいとろみで飲みやすい。飲み口が広いのでコーンが残らない。

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しっかりとしたとろみがある。コーンの入っている量が多い。甘みよりも塩味に寄ってる味付け。

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だしと塩味が強い。カップなのでコーンの粒は無し。とろみも強くスープというよりポタージュという感じがする。

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まろやかな甘味。味付け、とろみともにちょっと薄め?コーンのシャキシャキ感あるけど量少なめ。

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優しい甘味と旨味が口の中に広がる。しょっぱさは感じないけど後味がバターのコク。粒はシャキシャキ。

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香りがいい。だしの味が濃い。カップなのでコーンは無し。とろみが強めで飲んでいて満足感がある。お店で出てきそう。

 

アップするのを忘れていたら、自販機からコーンポタージュが姿を消していた。

ネイルマニキュアの話

現職ではネイルマニキュアが禁止である。

食に関連する業種なので、仕方ないと諦めている。

それに、趣味でベースをやっているので、どちらにしても爪を長く伸ばすことができないのだ。

ただ、友達や電車の中で見かける人が、可愛いネイルマニキュアをしていると時々羨ましく思う。

 

私が自分でじゃなくお金を払ってネイルマニキュアをしたのは、後にも先にも結婚式の時だけだ。

結婚式の次の日から新婚旅行のため休暇を5日間取っており、9連休くらいになったので、

『それくらいの期間落とさずにいられるなら勿体なくないかな』と思った。

友達の紹介で、すごく腕がいいと評判のネイルアーティストさんにやっていただいた。

クリアピンクに、白でレース模様を描いてもらったのだが、私がイメージ画像として提示したのはおそらくシールだったのに対し、

その人はとても細い筆(面相筆?)でおそろしく正確に模様を描いてくれた。

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(実際の画像)

お店でのネイルマニキュア初体験の私にはその凄さが具体的にはわからなかったのだけど、

新婚旅行から帰ってきたその足で別のお店でオフしてもらう時に感心されたので、

プロが尊敬するならその人はプロ中のプロなんだなぁと思った次第だ。

私は絵を描くのは好きだけれども、決してうまかったり画力が高い方ではないし、

手先は不器用でハンドメイドや手芸、細工物には滅法向いてないので、こういうことが出来る人は凄いなぁと尊敬する。

 

友達がネイルマニキュアを新しくしたよーとSNSにアップしている画像を見るのも好きだ。

オーダーしているのがその子だから当たり前なのだが、デザインや色使いに個性が出ていて、

次に会ったときにじっくり見せてもらいたいな、と思ったり、

どんな服と合わせるんだろう、と妄想するのがとても楽しい。

 

そんな中、お出かけの時用などにネイルチップを作ってあげるよ、と友達が声をかけてくれた。

どうやら、最近ハマっているらしい。

おうちにお呼ばれして、ネイルチップのために爪のサイズを測ってもらった。

ネイルチップにサイズがあるなんて、知らなかった。

デザインの希望も聞かれたので、色と仕上がりのイメージを伝えたのだが、

今思うと、結婚式の時も、今回お願いしたものもフレンチネイルだ。

もしかするとピアノを習い始めた小学校低学年からベースをやっている今まで、

爪の白いところはなるべく無いように切り揃えているので、無意識に憧れがあるのかもしれない。

とにかく、出来上がるのがとても楽しみだ。

ZOZOTOWNの話

ZOZOTOWNで古着を買うのにハマっている。

 

引越しの際に毛玉だらけのセーターたちを処分してしまい、

急に寒くなった今週、ワードローブにセーターが足りないことに気がついた。

私はミニマリストでは無いので、限られた枚数の服で生活することができない。

なるたけ色んなバリエーションの組み合わせで出勤したいのだ。

そのくせ、特に気に入った服は頻繁に着てしまうのだけれど。

行き帰りの電車の中で、ZOZOTOWNのアプリを立ち上げて、検索をする。

カテゴリはセーター、長袖でコンディションはS(さらぴん)かA(ええかんじ)、値段のレンジは〜¥2,000。

ぐいぐいスクロールし、心にグッと来たものだけ、ハートマークをつけてお気に入りに入れる。

 

絞り込み検索の結果を総ざらいしてしまうと、お気に入りに入れたものをじっくり確める。

袖や襟や全体のフォルムは自分の体型にあっているだろうか。

ローゲージニットは似合わないので外してしまおう。

薄手すぎるとこれからの季節に着れないのでなるべく分厚いものを残そう。

そうやって、商品画像を隅から隅まで見て気に入ったものだけをカートに入れる。

 

同じ古着ならメルカリやラクマでも良い商品がたくさんあるのだけれど、

こんな風にたくさん買いたいときは、やっぱりZOZOTOWNが一番便利だ。

特にフリマアプリは商品の色味が、現物どおりに再現されていないことが多い。

部屋の照明の色や加工により、届いてみると『画像とちゃうやん!』となることもしばしば。

ZOZOTOWNは古着でもブランドによっては新品の着用画像が大量にあり、

蛍光灯の元で撮られた商品画像と自然光の元の着用画像が揃っていれば、

実際の商品の色味も想像したレンジを超えないので安心だ。

 

そもそもなんで古着なのかというと、我が家の家計は大幅に食費に注ぎ込まれており、

被服費があまり予算をとれないことに関係している。

服をあまり買わない夫の服は必然的に長く着るので、新品のものを購入するが、

質より量、飽きたら売ってしまう自分の服は古着で充分である。

またコンディションの良い古着の『お得感』、これが自分を満足させている。

元値と古着価格を見比べてはにんまりしてしまうのだ。

 

最寄駅の宅配ロッカーに届いたZOZOTOWNの真っ黒い段ボール(そこそこ大きい)を抱え、

我が家へと向かうバスに乗り込むと隣の席に座った70歳前後のご婦人が目を丸くした。

「重くないの?何の荷物?」

「洋服なので、見た目ほどではないですよ」

「最近の若い人はネットで服を買うのねぇ、サイズとか合うの?」

「専用の服(ZOZOSUIT)を着て写真を撮れば、自分の体型に合うのか判定してくれるんです」

「まぁ、便利なのねぇ。服の色も選べるの?」

実際にアプリを立ち上げて画面を見せるとご婦人はほぅ、と感嘆した。

「靴まで売っているなんて!」

ガラケーなので縁が無いわと笑っていらっしゃったが、

なんとなく自分が広告塔にでもなった気分がした。

 

※この記事はアフィリエイト目的ではありません。

家を買った話

家を買った。

 

きっかけは、新婚割引の終了である。

結婚してからは都道府県が管理している賃貸住宅に住んでいたのだが、

契約日からの3年間の新婚割引(家賃額の2割減)が今秋で終わってしまうのだ。

本来の価格に戻るだけなのだが、主観的には家賃が毎月2万円弱高くなるのである。

これは痛い。

2万円というお金は多少食費を切り詰めただけでは捻出できない。

例えば外食を一切せず、スーパーの特売品や赤札商品で日々を乗り切れば可能かもしれないが、

お酒大好き、甘いものも大好き、外食も出来れば美味しいお店に行きたい派の夫と私には難しい。

 

日々をのんべんだらりと過ごしているうちに新婚と呼ばれる期間が終了しつつあるということにも焦りを覚えたが、

はてさてこの家賃が変わることに対してどういった対応を取ろうかと、年末から年始にかけて思案した。

まず、賃貸住宅で、新しい家賃と同価格帯でより良い立地や築年数のところに住めないか調べてみることにした。

しかし、結果、あまり住みたいと思える物件を見つけることができなかった。

つまり、新しい家賃は適正価格であり、今までの新婚割引はかなりお得に住めていたというわけだ。

制度に感謝。

 

こうした焦りを抱えているころ、会社の上司が「持ち家は良いぞ」という持論を昼食中に展開してきた。

上司は30代前半にして既に、1軒目の中古マンションを購入しリフォーム、その後売却し、2軒目の戸建て注文住宅を手に入れたとのことだった。

何だそのスピード感は。

今まで「そんなに年収2人とも高くないし返せるかわからんから賃貸でいいかな」と考えていたが、

上司の経験からくる持論には、「お、じゃあ購入も考えてみるか……」と心を動かされた。

 

しかし新築一戸建てや新築マンションは、考えている立地や専有面積で探してみると単価が高い。

月々の支払額をシミュレーションすると、結果的に今住んでいるところの家賃よりもかなり高くなってしまう。

すると、安価な中古住宅とリフォームをして住んだ方が安く上がるかもしれない。

 

たまたま、不動産業をしている友人とリフォーム業をしている友人が居たため、LINEで相談をしてみた。

善は急げ。

前者の友人からは打ち合わせの機会を持とうと積極的な返事が返ってきた。

後者の友人からは、増税後はリフォーム資材の価格が上がるので、増税前の方が良いだろうとのアドバイスを受けた。

 

そこから、良さげな中古物件を探す日々が始まった。

今のところ子供はおらず、夫婦二人暮らしだが、夫の趣味の漫画(600冊)がかさばるため、専有面積は余裕を持って70平米以上。

1階だと掃除をマメにしないとお風呂場がカビるという情報を得たため、2階以上。

私は電車通勤のため、ある程度の駅へのアクセスの良さを確保する。

いくつかの候補物件をGoogleスプレッドシートにまとめ、不動産業の友人との打ち合わせに赴いた。

 

打ち合わせではまず、資金計画の説明がなされた。

現在、銀行各社の住宅ローンの利率はもはやこれ以上低くなりようがないくらいで、いわば「借りどき」。

夫は同年代の平均年収よりも年収が低いのと、あまり大きな会社ではないため、連名でのローンも覚悟していたが、

友人が源泉徴収票を見た限りは夫のみでローンが通るだろうとのことだった。

私の作成したGoogleスプレッドシートも参考にしつつ、購入したい物件の価格レンジを決め、住みたいエリアを考えると、おのずと物件は絞られた。

数日後に内覧に行くことになった。

 

 

内覧の日には友人の案内のもと、おすすめの物件、3件を回った。

不動産の内覧ということで友人が運転するのだとばかしおもっていたのだが、個人タクシーを貸し切っていた。

交通事故のリスクがあるので、最近は社有車で内覧に行くことは減っているらしい。

なるほど。

内覧の結果、「この物件はここがいいけれどここがネック」ということがどの物件にもあり、即決はできなかった。

最後の物件のベランダで、夫がこう言った。

「あ、あれって、Googleスプレッドシートの候補に出してたマンションじゃない?」

自分たちだけで検討していた時に夫が興味を持っていたマンションが、バルコニーからよく見えた。

「あそこの物件は……商談中だったと思いますが、見に行けるかもしれません、気になりますか?」

友人がたずねる。

せっかくなので、お願いすることになった。

 

そのマンションは、とても見晴らしがよく、窓が多いので風通しも申し分ない。

駅までは少し距離があるが、バスの本数が多く通勤には困らない。

夫は自転車で通勤ができる。

室内は売主により全面リフォーム済で、水回りが広く使いやすそうだ。

 

ちょっと電話してきますね、と友人が席を外した。

「どう思う?」と夫に尋ねると、「もうここに決めたって顔してる」と言われた。

決心は固まっていた。

戻ってきた友人がさらに、こう言った。

「こちらの物件、商談していたお客様がキャンセルされたそうで、今はフリーです」

あぁ、運命とはこういうことだろうか。

 

後日、手付金を払い、売買契約書を交わし、私たちは家を手に入れた。

私が家買おうかな~と言い出してから約2週間での出来事で、夫は嵐に巻き込まれたようだったそうだ。

夫にはその後ローン契約・引渡などで休みの日をたくさん消費してもらった。

若干の申し訳なさがある。

 

その後、趣味の漫画のための本棚とPCを置くデスクを備えた書斎であったり、壁付けキッチンをアイランドキッチンにするためのリフォームを行い、

実際に新居に引っ越したのは内覧して家を決めてから、約4か月たってからであった。

住んでみるとBSが映らなかったり、PSの扉が壊れていて風でばっかんばっかんしたりしたが、

まぁそういった些細な不便なことを除けば、おおむね快適で、今はすっかり、我が家はいいぞ……という気分になっている。

 

この三連休がもし晴天ならば、カーテンを洗濯し、ソファカバーを新しいものに替え、こたつを出して、来るべき冬に備えよう。

”住”を強化するのは楽しみだな。

移動式ラーメン屋のラーメンを食べた話

沖縄県では梅雨明けしたとかしていないとか、今朝のニュースで小耳に挟んだ気がする。

先日までのどんよりじめじめした天気が嘘のように(ちょっと蒸し暑さは残ったものの)昼間は青空が気持ちいいくらいに晴れていた。

外食を済ませて家にたどり着き、お風呂に入る前の束の間のごろごろだらだらタイムを過ごしていたところ、

ベランダの開け放した窓から、夜風とともに微かな『どれみ〜ぃれど どれみれどれぇ〜』のメロディーがやってきた。

隣の布団で同じくごろごろしていた夫と目を合わせる。

 

以前から、移動式ラーメン屋のラーメンを食べてみたかった。

実家の住宅街には冬になると良くトラックが来ていたが、あいにく晩御飯をもりもり食べていたので、お世話にはならなかった。

昨年結婚しこちらに引っ越してきて、時々近くで前述のチャルメラの音を聴いては、『ここにも来るんやなぁ』と思っていたのである。

 

「私はお腹いっぱいやけど、もし買ってきたら食べる?」と問うと夫は首肯した。

財布を掴み、3年前に友達と沖縄に遊びに行った時に買って以来愛用しているビーチサンダルをつっかけ、マンションの階段を降りる。

エレベーターを待っていると、何となくトラックに追いつけない気がした。

 

音が聴こえてきた方向の大通りまで全速力の7割くらいのダッシュで向かう。

果たして、夢のラーメン屋のトラックは、私が立ち止まった交差点の斜向いで信号待ちをしていた。

大将兼ドライバーに視線を送ると、『そのまま直進するから脇に停めれそうなところで待っていて』というジェスチャをこちらに寄越してくれた。

従う。

 

停車してドアを開けた大将は、思ったよりもおじいちゃんだった。

街の中華屋さんの大将みたいな服を着ているのではなく、緑色のハンチングと同色のエプロンをしていて、何だかテラス席のあるカフェの店員さんのようだ。

どれにしますか、と、メニューを手渡される。

移動販売なのでラーメン1種類、選択の余地なしだと思い込んでいたので内心焦ったが、5秒だけ悩んで、しょうゆラーメンと塩ラーメン1杯ずつを注文する。

1,200円。

運転席の奥が厨房のようになっており、発泡スチロールのラーメン鉢が並んでいるのが見えた。

作っている最中に、代金がぴったりあるかと、コショウをふっても良いかの2点を聞かれた。

ほどなくしてラーメンは出来上がり、ラーメン鉢にラップを掛け、輪ゴムをして、底のサイズがぴったりで動く余地のないビニール袋に入れてくれた。

(2杯のラーメンが縦に重なる形だったが、驚くほど安定していた)

 

家に帰り、ラーメンを食卓に取り出す。

受け取る時には見ていなかったが、トッピングはチャーシューと小口ねぎ、もやしだった。

ちょうどいい硬さの中太麺、しゃきしゃきのもやし、味わい深いチャーシュー、乾いていないねぎが美味しい。

塩ラーメンの方があっさりしているかと思いきや意外にスパイシーな味で、しょうゆラーメンのほうが僅かな甘みがあり優しい味だった。

布団でごろごろしていた時は食べるつもりはなかったのに、すっかり一人分は平らげてしまった。

夫いわく、チャーシューが懐かしい味がするとのこと。

 

おじさんの携帯番号に電話をしたら、予約もできるらしいが、あえてトラックに貼ってあったその番号を控えずに帰ってきた。

またあの音が聴こえたら、買いに行こう。

ジェンダーの話

昨晩の職場の呑み会で、ちょっと普段より多めにワインを摂取してしまったせい、もしくはカフェイン耐性が弱いのにドルチェの際にエスプレッソを飲んでしまったせい、で起きてしまった。

2時間ほど布団の中でごろごろしてみたが、眠れないので久しぶりになにか書いてみる。

 

最近Twitterではジェンダーの話が盛んにtweetされている気がする。

(フォローしている大学の友人達に関心が高い人が多いので、観測範囲が偏っている面はあれど)

そういうものを見る中で思い出したこと。

 

小学校中学年ぐらいだろうか、まだセックスとジェンダーの違いを知らず、それらを引っくるめた『性別』として男女の区別をしていたころ。

父方の祖母が私にはしきりに『ほら、あんたも手伝いしなさい、女のなりしてからに』というのに、3歳下の弟には一切言わないことが、不服でたまらなかった。

何故そこに『性別』が出てくるんだ。

百歩、千歩、いや万歩、譲って『あなたが年上なのだから』ならわからなくはない。

年齢的に、私の方が弟よりも、安全で指示が通りやすいという理由ならすんなりと受け入れられたと思う。

しかし、手伝いを命じる祖母の口からは決まって『女のなり』という言葉が出てきた。

それは私たち姉弟が成長しても変わらず、私だけにかけられる言葉だった。

決してお手伝いをしたくないわけではないが、性別だけを理由にお手伝いをしないといけないというのは、納得が行かなかったのだ。

 

小学校3年生だったと思う。

算数の授業で図形の単元に入る前に、全員コンパスを購入させられた。

カラーのチラシにコンパスが2種類。

軸の部分が赤色と、青色のもの。

私は彩度の低いその赤色があまり好きな色に思えなくて、青色のものを注文した。

しかし、同じクラスの女子生徒で青色のコンパスを選んだのは、私だけだった。

36人学級で大体半分くらい、20人弱が女子生徒だったと思うが、

『皆そんなに赤色が好きなんだろうか』と幼心に疑問に思った。

もしかしたら、皆本当に赤色が好きで自主的に選んだのかもしれないけれど。

(このコンパスは今でも実家の私の学習机にあり、高校で数学と決別してからは主にCLINIQUEのパウダリーファンデーションのコンパクトからの詰替時に活躍していた)

 

就職活動のとき、財閥系のグループ企業の二次面接で言われた忘れられないひとことがある。

『なんで、女の子なのに総合職で応募したの?一般職じゃ駄目なの?』

志望理由や意気込みを知りたいのであれば『総合職を目指した理由を教えて下さい』で過不足ないだろう。

『女の子なのに』とはなんだ。

当時は知らなかったが、もしこうした質問を女性の応募者に限定してやっていたのならば、明らかに厚生労働省の言うところの『不適切な質問』だ。

 

大学を出、企業に勤めて実感したけれど、女らしさ、男らしさ、を評価軸にする人は自分が思っていた以上に居るものだ。

例えばプライベートで異性の好みとして、そういう評価軸を持つのは、その人の自由だと思う。

他人に迷惑をかけない限り。

厄介なのは、それを正しい価値観だとして、全くそれを適用する必要のないところで、ふるってしまう人の存在だ。

これだけハラスメントが問題になる世の中で、『これは正しい価値観だから自分のやっていることはハラスメントではない』と考えている人。

いや、考えてすらいないかもしれない。

無意識のうちにそれらを行使してしまう人。

 

男性から女性に対してばかりクローズアップされるが、女性から男性に対して、女性から女性に対して、男性から男性に対して、性別を理由にしたハラスメントはある。

前職で営業事務職の募集に応募してきた男性のことを、役員が『事務の男なんて採るかいな』と言っていたのには耳を疑った。

その人の希望や、適性、前職での経験を無視して、そんなことを言うのだ。

お茶くみ、電話番をやりましょうね、と新人女性にのみ業務引き継ぎをするのは、女性の上司だった。

『何故女性だけなんですか』と尋ねると『男性は忙しいから、こういうのは女性がやらなきゃいけないの』と言われた。

 

転職してからは幸いにして、ハラスメントというほどのことは受けていない。

けれど、恐らく前職の会社では上記のようなことが今でも日常茶飯事なのだと思う。

そんな会社は、今の日本に何社くらいあるのだろうか。

もし性別をというフィルターを通さずに働くことが出来たら、働きやすくなる人がどれだけいるだろうか。

眠れないので思いを巡らせてみた。

親不知の話

昭和ひと桁生まれの母方の祖母は受け口で、終戦後、女学生だった当時、和歌山県田辺市からはるばる大阪市内まで歯列矯正に通っていたらしい。

隔世遺伝を見事に受け継いだ私もまた受け口かつ乱杭歯で、小学校6年生から高校3年生まで、歯の矯正をしていた。

晴れて大学に入る直前に全ての矯正器具は取れ、私は新しい歯ならびで新生活をエンジョイ出来ることとなった。

 

そして幾年かの歳月が流れ、なんだか歯ならびがまた悪くなっているのに気付いた。

一時はまっすぐに揃っていたはずの前歯の両横の歯が、また前歯の裏側に入り込もうとしている……!

昨年末に知覚過敏の症状で歯医者にかかった際、上の左側の親不知が出てきていることがわかっていたのだが、

「特に痛いとかじゃなければ様子を見ましょう」ということで、そのままにしておいたのである。

しかし、せっかく歯列矯正した歯が元に戻ってしまうのは、困る!

 

前回行ったクリニックはこじんまりしていて、恐らくまだ頭を出したばかりの親不知を抜歯してもらうのには紹介状を書いてもらうことになる。

それならいっそ、最初から抜歯が出来ると明記されている大きいクリニックで治療してもらうほうが良い。

最寄り駅の近く、大きな商業施設のクリニックが集まったフロアにあるクリニックに行くことにした。

 

レントゲンを取ったところ、私の上あごには左右とも、親不知が生えてきているようだった(右側に関してはまだ顔を出す気配はない)。

前述の歯科矯正を行っていた頃レントゲンを取った際は、下あごの右側しか親不知が無かったはずなのに。

親不知、恐るべしである。

「頰の柔らかい骨の部分と重なっているように見えます。

 上あごの親不知はどんなに口を開けてもらっても、こちらからは見えません。

 なので、手の感覚と"勘"が頼りです。

 どうしても、100人に1人くらい、抜歯の際に骨部分も一緒に取れて、

 しばらく鼻から歯茎がつながってしまう場合があります」

医師の穏やかでない説明にどぎまぎする。

「まぁ、その場合また手術して塞ぎます」

フォローのような言葉をかけてくれるが、何の支えにもならない。

100人に1人は多くないか。

「例えば、抜きやすくなるためにこの親不知を放っておいたらどうなりますか」

「確実に、どんどん歯並びは悪くなります」

「なら、抜いて下さい!」

というわけで、一週間後に抜歯を行うことになった。

 

金曜日の夜に手術の予定を入れ、本当は社内カレンダーで出勤日だった土曜日に有給休暇を取った。

多少は腫れるかもしれないが、土日の2日間があれば少しはマシになるだろう。

 

手術は、30分もかからなかった。

麻酔注射をして、それが効くまでの時間も考えれば、私の口腔内で何かが行われていた時間は20分足らずであろう。

年間何百本も抜歯を行う手練の医師だけあって、これでも手こずった方だとのコメントを頂いた。

そして、どうやら頬の骨は無事だったようで、うがいをして鼻から水が出てくるようなこともなかった。

処方されたロキソニンは3錠しかなかったので、次の日の朝にはすぐに薬局に行って、追加のロキソニンを買った。

結局、もともと頬に脂肪がついているので目立って顔が腫れている状態にもならず、痛みも引き、月曜にはいつも通りに仕事が出来た。

 

抜歯、でなく、抜糸の際に、「右上の親不知も出てきますか」という質問を投げた。

「そうですね、レントゲンを見た限り、出てこないと思います。

 でも、90歳のおばあちゃんでも親不知が出てきたりするんですよ」

「90歳……!」

 

願わくば、このまま墓場に入るまで、生えてきませんように。

お風呂の蛇口の話

お盆休みに、4月くらいに予約してからというもの、ずっと楽しみにしていた江の島・横浜に行った。

しかし、今から書くのは、旅行のことではなく、お風呂の蛇口の話である。

 

夫と宿泊するホテルの部屋はよっぽど奮発する際を除いて、ほとんどがユニットバスなので、

入浴時はシャワーカーテンを使用しながら床を濡らさぬよう、注意を払う必要がある。

いささか窮屈ではあるが、このユニットバスタイプの浴室と洗面所で、ひとつ嬉しい部分がある。

チェックインしたら、荷物をおろすやいなや、早々にバスルームを検分しに行く。

もし蛇口が赤と青の2つあり、温度調整を自分で行うタイプのものだと、私のテンションはたちまち上がる。

温度調整が難しく火傷の危険を伴うので、恐らく世間の方には人気はないだろう。

しかし、私にとっては、普段自分の家でシャワーを浴びる時にどんなにあったかくしてもせいぜい45℃くらいなのを思うと、

こうやって結構な熱さのシャワーを好きな時に浴びることができるということがとても魅力的でたまらないのだ。

会社に出勤する日は何度もスヌーズをかけ、ぎりぎりの時間になってようやく起きようとするのに対し、

旅先だと、前の晩少し呑みすぎて寝るのが遅くなったとしても、ベッドサイドのアラームで即座に起きることができる。

そして、火傷しないけれど身体が真っ赤っかになるくらいの温度を熱いシャワーを浴びるのだ。

夫はまだぐっすりと眠っているので、バスルームを占領していても何の問題もない。

全身洗ってしまうと、浅めにお湯を張る。

肩までためてしまうとのぼせてしまうので、腰が浸かるぐらいでちょうどいい。

じんわりと、全身が弛緩していくあの感覚がたまらない。

すっかり温まったら、今度は髪をまとめ、服を着て、お化粧タイムに入る。

洗顔はぬるま湯がいいのだろうけれど、洗面台も2色の蛇口の場合、やはりこちらも熱めのお湯で洗ってしまう。

すっかり開いた毛穴に染みていく化粧水が気持ちよくて病みつきになる。

そしてお化粧をしているうちに夫が目を覚まし、すっぴんじゃない状態で朝食会場へ向かえるのだ。

 

今借りているマンションの給湯温度は壁にひっついたリモコンで操作できる。

来年の冬休みはアウトレットに買い物に行って、おこたでぬくぬくDVDでも観ながら過ごすつもりなので、

次に旅の醍醐味を味わえるのはちょうど一年後の夏休みになるだろう。

早くまた、あの熱いお風呂を味わいたい。