お風呂の蛇口の話
お盆休みに、4月くらいに予約してからというもの、ずっと楽しみにしていた江の島・横浜に行った。
しかし、今から書くのは、旅行のことではなく、お風呂の蛇口の話である。
夫と宿泊するホテルの部屋はよっぽど奮発する際を除いて、ほとんどがユニットバスなので、
入浴時はシャワーカーテンを使用しながら床を濡らさぬよう、注意を払う必要がある。
いささか窮屈ではあるが、このユニットバスタイプの浴室と洗面所で、ひとつ嬉しい部分がある。
チェックインしたら、荷物をおろすやいなや、早々にバスルームを検分しに行く。
もし蛇口が赤と青の2つあり、温度調整を自分で行うタイプのものだと、私のテンションはたちまち上がる。
温度調整が難しく火傷の危険を伴うので、恐らく世間の方には人気はないだろう。
しかし、私にとっては、普段自分の家でシャワーを浴びる時にどんなにあったかくしてもせいぜい45℃くらいなのを思うと、
こうやって結構な熱さのシャワーを好きな時に浴びることができるということがとても魅力的でたまらないのだ。
会社に出勤する日は何度もスヌーズをかけ、ぎりぎりの時間になってようやく起きようとするのに対し、
旅先だと、前の晩少し呑みすぎて寝るのが遅くなったとしても、ベッドサイドのアラームで即座に起きることができる。
そして、火傷しないけれど身体が真っ赤っかになるくらいの温度を熱いシャワーを浴びるのだ。
夫はまだぐっすりと眠っているので、バスルームを占領していても何の問題もない。
全身洗ってしまうと、浅めにお湯を張る。
肩までためてしまうとのぼせてしまうので、腰が浸かるぐらいでちょうどいい。
じんわりと、全身が弛緩していくあの感覚がたまらない。
すっかり温まったら、今度は髪をまとめ、服を着て、お化粧タイムに入る。
洗顔はぬるま湯がいいのだろうけれど、洗面台も2色の蛇口の場合、やはりこちらも熱めのお湯で洗ってしまう。
すっかり開いた毛穴に染みていく化粧水が気持ちよくて病みつきになる。
そしてお化粧をしているうちに夫が目を覚まし、すっぴんじゃない状態で朝食会場へ向かえるのだ。
今借りているマンションの給湯温度は壁にひっついたリモコンで操作できる。
来年の冬休みはアウトレットに買い物に行って、おこたでぬくぬくDVDでも観ながら過ごすつもりなので、
次に旅の醍醐味を味わえるのはちょうど一年後の夏休みになるだろう。
早くまた、あの熱いお風呂を味わいたい。