ねこと二人称の話
大学を卒業し、実家に戻ったその1年後、今度は弟が大学に進学し、下宿のため家を出て行った。
両親と父方の祖父と私の4人で暮らすようになり3年半ほどが経つ(父方の祖母は4回生の時に亡くなった)。
自分自身が家族に二人称、三人称問わず何と呼ばれているか、
シーンや状況によって変わるので、あまり意識することはなかった。
が、あえて順位をつけるとしたらこうだろう。
1.愛称(ファーストネームをもじったもの)→圧倒的に両親も祖父もこれが多い。呼びやすいらしい。お風呂がわいたことを知らせるときや何か手伝って欲しいときの呼びかけはほぼこれである。
2.ファーストネーム→シリアスな話をしているとき、相手がやや頭にきつつあるとき、もしくは親戚と話しているときに登場する際の三人称として。
3.代名詞→祖父と母は全くと言って良いほど使わないが、父はよく『あんた』『お前』、そして関西弁での『自分』を使う。
4.お姉ちゃん→弟が下宿してからは少なくなったが小中高あたりは結構呼ばれていた気がする。
だが、ここ2年弱ほど、急にまた4の需要が高まり、2に追いつけ追い越せの勢いだ。
その理由とは、我が家にねこがやってきたから。
2014年のクリスマスを過ぎてから我が家にやってきた真っ白な子猫、ビアンカ。
毛が細く密集し撫で心地の良い白い毛皮、大きく血管がピンクに透けた耳、くりくりとしてビー玉のようなアイスブルーの瞳を持つ彼女は、
公園で震えていたところを野良猫として保護され、ご飯をもりもり食べよく眠り、今じゃいっぱしの美猫として幅を利かせている。
ねこを飼うに至ったのはもともと結婚前に飼育経験のあるねこ好きの母の強い要望であり、
祖父と父はどちらかと言えば動物を飼うことそのものに対して拒否感が強かった。
昭和一桁世代の祖父が『ねこだって畜生だから』といった言葉を私は一生忘れることがないだろう。
本人に悪気は全くなかろうとも。
しかし、外には一歩も出さずに育てているので、必然的に家族と共有する時間が増えた彼女は、
男性陣2人のハートもがっちりつかみ、いつしかペットという扱いでなく、家族の一員として存在感を放つようになった。
それに比例して、私がお姉ちゃんと呼ばれる頻度が高まってきたのに近ごろ気づいた。
ねこではあるが、末の妹ができたのである。
もう両親が人間の子供を産むことはないと思われるが、いくつになってもこのようにして家族構成は変わることがあるんだな、と実感している。