ごった煮イマジネーション

140字じゃ足りないあれこれ。

家を買った話

家を買った。

 

きっかけは、新婚割引の終了である。

結婚してからは都道府県が管理している賃貸住宅に住んでいたのだが、

契約日からの3年間の新婚割引(家賃額の2割減)が今秋で終わってしまうのだ。

本来の価格に戻るだけなのだが、主観的には家賃が毎月2万円弱高くなるのである。

これは痛い。

2万円というお金は多少食費を切り詰めただけでは捻出できない。

例えば外食を一切せず、スーパーの特売品や赤札商品で日々を乗り切れば可能かもしれないが、

お酒大好き、甘いものも大好き、外食も出来れば美味しいお店に行きたい派の夫と私には難しい。

 

日々をのんべんだらりと過ごしているうちに新婚と呼ばれる期間が終了しつつあるということにも焦りを覚えたが、

はてさてこの家賃が変わることに対してどういった対応を取ろうかと、年末から年始にかけて思案した。

まず、賃貸住宅で、新しい家賃と同価格帯でより良い立地や築年数のところに住めないか調べてみることにした。

しかし、結果、あまり住みたいと思える物件を見つけることができなかった。

つまり、新しい家賃は適正価格であり、今までの新婚割引はかなりお得に住めていたというわけだ。

制度に感謝。

 

こうした焦りを抱えているころ、会社の上司が「持ち家は良いぞ」という持論を昼食中に展開してきた。

上司は30代前半にして既に、1軒目の中古マンションを購入しリフォーム、その後売却し、2軒目の戸建て注文住宅を手に入れたとのことだった。

何だそのスピード感は。

今まで「そんなに年収2人とも高くないし返せるかわからんから賃貸でいいかな」と考えていたが、

上司の経験からくる持論には、「お、じゃあ購入も考えてみるか……」と心を動かされた。

 

しかし新築一戸建てや新築マンションは、考えている立地や専有面積で探してみると単価が高い。

月々の支払額をシミュレーションすると、結果的に今住んでいるところの家賃よりもかなり高くなってしまう。

すると、安価な中古住宅とリフォームをして住んだ方が安く上がるかもしれない。

 

たまたま、不動産業をしている友人とリフォーム業をしている友人が居たため、LINEで相談をしてみた。

善は急げ。

前者の友人からは打ち合わせの機会を持とうと積極的な返事が返ってきた。

後者の友人からは、増税後はリフォーム資材の価格が上がるので、増税前の方が良いだろうとのアドバイスを受けた。

 

そこから、良さげな中古物件を探す日々が始まった。

今のところ子供はおらず、夫婦二人暮らしだが、夫の趣味の漫画(600冊)がかさばるため、専有面積は余裕を持って70平米以上。

1階だと掃除をマメにしないとお風呂場がカビるという情報を得たため、2階以上。

私は電車通勤のため、ある程度の駅へのアクセスの良さを確保する。

いくつかの候補物件をGoogleスプレッドシートにまとめ、不動産業の友人との打ち合わせに赴いた。

 

打ち合わせではまず、資金計画の説明がなされた。

現在、銀行各社の住宅ローンの利率はもはやこれ以上低くなりようがないくらいで、いわば「借りどき」。

夫は同年代の平均年収よりも年収が低いのと、あまり大きな会社ではないため、連名でのローンも覚悟していたが、

友人が源泉徴収票を見た限りは夫のみでローンが通るだろうとのことだった。

私の作成したGoogleスプレッドシートも参考にしつつ、購入したい物件の価格レンジを決め、住みたいエリアを考えると、おのずと物件は絞られた。

数日後に内覧に行くことになった。

 

 

内覧の日には友人の案内のもと、おすすめの物件、3件を回った。

不動産の内覧ということで友人が運転するのだとばかしおもっていたのだが、個人タクシーを貸し切っていた。

交通事故のリスクがあるので、最近は社有車で内覧に行くことは減っているらしい。

なるほど。

内覧の結果、「この物件はここがいいけれどここがネック」ということがどの物件にもあり、即決はできなかった。

最後の物件のベランダで、夫がこう言った。

「あ、あれって、Googleスプレッドシートの候補に出してたマンションじゃない?」

自分たちだけで検討していた時に夫が興味を持っていたマンションが、バルコニーからよく見えた。

「あそこの物件は……商談中だったと思いますが、見に行けるかもしれません、気になりますか?」

友人がたずねる。

せっかくなので、お願いすることになった。

 

そのマンションは、とても見晴らしがよく、窓が多いので風通しも申し分ない。

駅までは少し距離があるが、バスの本数が多く通勤には困らない。

夫は自転車で通勤ができる。

室内は売主により全面リフォーム済で、水回りが広く使いやすそうだ。

 

ちょっと電話してきますね、と友人が席を外した。

「どう思う?」と夫に尋ねると、「もうここに決めたって顔してる」と言われた。

決心は固まっていた。

戻ってきた友人がさらに、こう言った。

「こちらの物件、商談していたお客様がキャンセルされたそうで、今はフリーです」

あぁ、運命とはこういうことだろうか。

 

後日、手付金を払い、売買契約書を交わし、私たちは家を手に入れた。

私が家買おうかな~と言い出してから約2週間での出来事で、夫は嵐に巻き込まれたようだったそうだ。

夫にはその後ローン契約・引渡などで休みの日をたくさん消費してもらった。

若干の申し訳なさがある。

 

その後、趣味の漫画のための本棚とPCを置くデスクを備えた書斎であったり、壁付けキッチンをアイランドキッチンにするためのリフォームを行い、

実際に新居に引っ越したのは内覧して家を決めてから、約4か月たってからであった。

住んでみるとBSが映らなかったり、PSの扉が壊れていて風でばっかんばっかんしたりしたが、

まぁそういった些細な不便なことを除けば、おおむね快適で、今はすっかり、我が家はいいぞ……という気分になっている。

 

この三連休がもし晴天ならば、カーテンを洗濯し、ソファカバーを新しいものに替え、こたつを出して、来るべき冬に備えよう。

”住”を強化するのは楽しみだな。