ごった煮イマジネーション

140字じゃ足りないあれこれ。

移動式ラーメン屋のラーメンを食べた話

沖縄県では梅雨明けしたとかしていないとか、今朝のニュースで小耳に挟んだ気がする。

先日までのどんよりじめじめした天気が嘘のように(ちょっと蒸し暑さは残ったものの)昼間は青空が気持ちいいくらいに晴れていた。

外食を済ませて家にたどり着き、お風呂に入る前の束の間のごろごろだらだらタイムを過ごしていたところ、

ベランダの開け放した窓から、夜風とともに微かな『どれみ〜ぃれど どれみれどれぇ〜』のメロディーがやってきた。

隣の布団で同じくごろごろしていた夫と目を合わせる。

 

以前から、移動式ラーメン屋のラーメンを食べてみたかった。

実家の住宅街には冬になると良くトラックが来ていたが、あいにく晩御飯をもりもり食べていたので、お世話にはならなかった。

昨年結婚しこちらに引っ越してきて、時々近くで前述のチャルメラの音を聴いては、『ここにも来るんやなぁ』と思っていたのである。

 

「私はお腹いっぱいやけど、もし買ってきたら食べる?」と問うと夫は首肯した。

財布を掴み、3年前に友達と沖縄に遊びに行った時に買って以来愛用しているビーチサンダルをつっかけ、マンションの階段を降りる。

エレベーターを待っていると、何となくトラックに追いつけない気がした。

 

音が聴こえてきた方向の大通りまで全速力の7割くらいのダッシュで向かう。

果たして、夢のラーメン屋のトラックは、私が立ち止まった交差点の斜向いで信号待ちをしていた。

大将兼ドライバーに視線を送ると、『そのまま直進するから脇に停めれそうなところで待っていて』というジェスチャをこちらに寄越してくれた。

従う。

 

停車してドアを開けた大将は、思ったよりもおじいちゃんだった。

街の中華屋さんの大将みたいな服を着ているのではなく、緑色のハンチングと同色のエプロンをしていて、何だかテラス席のあるカフェの店員さんのようだ。

どれにしますか、と、メニューを手渡される。

移動販売なのでラーメン1種類、選択の余地なしだと思い込んでいたので内心焦ったが、5秒だけ悩んで、しょうゆラーメンと塩ラーメン1杯ずつを注文する。

1,200円。

運転席の奥が厨房のようになっており、発泡スチロールのラーメン鉢が並んでいるのが見えた。

作っている最中に、代金がぴったりあるかと、コショウをふっても良いかの2点を聞かれた。

ほどなくしてラーメンは出来上がり、ラーメン鉢にラップを掛け、輪ゴムをして、底のサイズがぴったりで動く余地のないビニール袋に入れてくれた。

(2杯のラーメンが縦に重なる形だったが、驚くほど安定していた)

 

家に帰り、ラーメンを食卓に取り出す。

受け取る時には見ていなかったが、トッピングはチャーシューと小口ねぎ、もやしだった。

ちょうどいい硬さの中太麺、しゃきしゃきのもやし、味わい深いチャーシュー、乾いていないねぎが美味しい。

塩ラーメンの方があっさりしているかと思いきや意外にスパイシーな味で、しょうゆラーメンのほうが僅かな甘みがあり優しい味だった。

布団でごろごろしていた時は食べるつもりはなかったのに、すっかり一人分は平らげてしまった。

夫いわく、チャーシューが懐かしい味がするとのこと。

 

おじさんの携帯番号に電話をしたら、予約もできるらしいが、あえてトラックに貼ってあったその番号を控えずに帰ってきた。

またあの音が聴こえたら、買いに行こう。